皇后ジョセフィーヌとバラの物語~涙の別離が生んだ「モダンローズ」

ナポレオンの栄達を支えた皇后ジョセフィーヌ。
そのエレガントな立ち居振る舞い、たぐいまれなるファッションセンスと美意識、あたたかい人間性で、宮廷人だけでなく庶民にも広く愛され、憧れられる存在でした。
波乱に満ちた人生の中で、彼女がとりわけ愛して情熱を注いだのがバラの花・・・。実は、ジョセフィーヌのおかげで、色々な種類・香りの美しいバラたちを楽しめるようになったんですよ♪
さらに、日本でも大人気のボタニカルアートの巨匠・ルドゥーテも、彼女の存在なくしては、美しい作品の数々を世に送り出すことはなかったかも・・・。
今回は私の大好きな、大好きなジョセフィーヌとバラのお話。ルドゥーテの美しいバラの絵画と一緒にお楽しみいただけたらうれしいです!
1:ジョセフィーヌが愛した「バラの楽園」

ジョセフィーヌはカリブ海に浮かぶ、マルティニーク島でフランス貴族の娘として産まれました。南国の小さな島で野生の草花に囲まれて育ったジョセフィーヌは天性の愛らしさと人懐っこさを持った女性に育ちます。
やがて、本国フランスに渡り、貴族の男性と結婚しましたが、フランス革命で夫は処刑され、財産もすべて失ってしまいます。革命後に社交界に出入りしていた時に、ナポレオンと運命的な出会いを果たし、結婚。社交界で培った人脈と社交術を駆使してナポレオンの力となり、皇后の地位にまで上り詰めた希有な女性です。

皇帝ナポレオンが皇后ジョセフィーヌの頭上に冠を掲げています。
ちなみに、とってもオシャレで当時の貴婦人たちのファッションアイコンでもあったジョセフィーヌは、洋服や宝石、インテリア、美術品など、とにかく美しいものに目がなく、かなりの浪費家だったとか・・・これにはナポレオンも相当、手を焼いていたようです。
彼女の浪費癖のエピソードは数多く遺されていますが、一番びっくりしてしまうのが、「夫の留守中にお城を1軒買っちゃった♪」事件!ナポレオンがエジプト遠征に出かけている間に、パリ郊外のマルメゾン城を勝手に購入してしまったのです。結局、その後、ナポレオンも大変ここを気に入り、宮殿よりもマルメゾン城の書斎で仕事をすることを好んだそうなので、まあ、「結果、オーライ!」なのですが・・・笑。

さて、念願のマルメゾン城を手に入れたジョセフィーヌは、内装や家具、庭園を一大リフォームします。すっかり寂れて果てていた時代遅れの城館は、ジョセフィーヌの洗練されたセンスで、訪れる人の心をときめかせる話題のスポットへと、大変身を遂げました。
なかでも人々の注目を集めたのは、世界中の珍しい植物を集めた庭園と大温室でした。というのも、エキゾチックな植物が大好きだった南国育ちのジョセフィーヌ・・・ヨーロッパにとどまらず、アフリカやアジア、アメリカ、オーストラリアなど世界中から見たこともないような植物を集めて、マルメゾン城で育てていました。
ジョセフィーヌは自慢の庭園や温室で、よくピクニックやお茶会を開いていたそうで、マルメゾンのお茶会は貴婦人たちの憧れの的でした。エキゾチックな植物に囲まれて南国気分を味わいながら、優雅にお茶を楽しめるなんて・・・想像するだけでも、素敵ですよね♪

ガラスに囲まれた温室には、南国の花々や植物が・・・

沢山の白鳥や黒鳥が放し飼いにされていて、招待客をボート遊びでもてなしたとか。
さて、筋金入りの「植物収集マニア」だったジョセフィーヌですが、なかでも情熱を傾けていたのが「バラの収集」!バラに関しては、お金に糸目をつけず、プラントハンターに探検のための資金を投資したり、ナポレオンの部下にも個人的にお願いして、遠征先から珍しい種を持ち帰ってもらっていたそう・・・。
当時、バラの研究や栽培の最先端を走っていたのは、フランスと敵対関係にあるイギリス。世界中から集められたバラの種は、イギリスの園芸業者の元に集められ、そこからヨーロッパ中に販売されていました。
ところが、当時のフランスでは、ナポレオンが出した「大陸封鎖令」によって、イギリスとの貿易が厳しく取り締まられていました。フランスの園芸愛好家たちは、バラの種を入手できない・・・という残念な状況でした。
ですが、ジョセフィーヌは、なんと、裏ルートや他の国を経由する特殊なルートを使ってまで、バラの種をこっそり手に入れていたとか・・・。封鎖令を出した張本人の妻なのに、皇帝の命令に違反してまで、種を手に入れていた彼女の執念には、本当にビックリしてしまいますよね!
こうして、マルメゾンに集められたバラの種類は、250種類以上もあったといいます。当時、世界中に存在したバラのほとんどを網羅するともいわれる膨大なコレクション・・ジョセフィーヌは、文字通り、マルメゾンに「バラの楽園」を作り出したのです。

庭園でのパーティーを描いたこの絵画では、ナポレオンが画面中央・白いドレスを着たジョセフィーヌにピンクのバラを手渡していますね!
夫のナポレオンもバラが大のお気に入りで、この絵画のように、よく庭で摘んできたバラをジョセフィーヌにプレゼントしていた・・・という、心温まるエピソードも残されているんですよ♪
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