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美貌の皇妃・エリザベートの魂を救ったスイーツとは?

 今なお、絶世の美女として名高い、オーストリア・ハプスブルク家のエリザベート皇妃。

「シシィ」の愛称で知られる彼女は、映画やミュージカルなどが数多く作られるほど、世界中で愛され続けているプリンセスです。

また、エリザベートといえば、ストイックなダイエットを続け、ウェスト50cmというスリムな体型を維持していたというエピソードでも有名ですよね。

厳しい食事制限を行い、アスリート並みの運動を欠かさなかったエリザベートですが、意外なことに甘いスイーツには目がなかったとか…。

すさまじいまでのダイエットを繰り返す一方で、なぜスイーツだけは、ずっと食べ続けていたのでしょうか・・・? 一見すると、つじつまが合わない、不思議な行動に思えますよね。

 けれども、彼女が置かれていた境遇を考えると、それは、「自分の心をなんとか保つための必死の行動」だったのかもしれません。今回は、スイーツを巡るエリザベートの物語と、彼女が愛したスイーツの数々をご紹介します!


1:「かごの鳥」のような宮廷生活

 現在のドイツ・バイエルン地方の名門貴族の家に生まれたエリザベートは、自由闊達で芸術家肌な両親の元でのびのびと育てられました。

貴族の家庭にしては珍しく、家族の仲がとても良い一家だったそうで、エリザベートは両親の愛情をたっぷり受けて育ちました。幼い頃のエリザベートは、兄弟たちと野山を駆けまわり、乗馬や詩が大好きな少女だったといいます。

 バイエルンの自然と自由な気風の中で、屈託なく、感性が豊かな少女に育ったエリザベートですが、15歳の時にオーストリアの若き皇帝、フランツ・ヨーゼフに見初められて、結婚。わずか16歳で大ハプスブルク帝国の皇后になってしまったのです。

婚約当時(16歳)のエリザベート。表情も生き生きとして、凜とした強さも感じられます。

 田舎の公爵令嬢が皇帝に見初められて、ヨーロッパ随一の王家のプリンセスに・・・エリザベートの結婚は国内外から祝福され、帝国中の若い女性が羨むようなシンデレラストーリーでした。ところが、当のエリザベート本人にとっては、幸せとはほど遠い、苦痛に満ちた結婚生活の始まりだったのです・・・。

 当時のウィーンの宮廷は、100年以上前から続く古いしきたりに縛られた、とても、とても保守的な場所でした。

そこでは、すっかり時代遅れになって、何の意味もないような形だけの儀式が、型どおりにひたすら繰り返されていたのです。

晩餐会のテーブルを再現したもの。週三回開催され、「隣席としか話してはならない」などの厳しい規則がありました。貴族、財界、軍人が招待され、会話も雑談は原則禁止。
国事や軍事など「重大な案件」が議論されたとか・・・。これに同席するのは、苦痛ですねー(^_^;

 しかも、宮廷を取り仕切っていた姑のゾフィー大后は、ひときわ保守的な人物。「ハプスブルク家の格式と伝統を守ることがライフワークです!」といったような融通の利かない、厳しい性格の人でした。

ゾフィー大后にとっては、何よりも大切にすべきは、「帝国の安定とハプスブルク家の伝統」。「ハプスブルク家の者が個人の自由や幸せを求めるなど、もってのほか!」というのが彼女のポリシーでした。

 あたたかな心の交流と個人の自由を大切にする家庭で育ったエリザベートとは、水と油ほどに違う正反対の価値観を持っていたのです。

 ゾフィー大后はエリザベートを「ハプスブルク家の立派な皇妃」にしようと、それはそれは厳しいお妃教育を続けました。エリザベートの行動を逐一、監視させて、一挙手一投足にまで口を出しては、厳しく叱責し続けたと言います・・・。

 ただでさえ堅苦しい生活なのに、こんな境遇に置かれてしまったら、まるで鳥かごの中に閉じ込められたような閉塞感と、そこから「一生逃れられないんだわ・・・」という絶望感を感じてしまいますよね・・・。

結婚して1年。長女を出産後と思われる肖像。
生まれたばかりの長女を義母に取り上げられ、悲しみの日々が続いていた頃でしょうか?
表情は固く、人形の様に感情が読み取れない表情に・・・。

 形ばかりの儀式が何時間も続き、豪華だけれどもワンパターンな料理が並ぶ晩餐会では、型どおりの退屈な会話が飛び交うばかり…。表ではお世辞やおべんちゃらで相手を持ち上げながら、裏では悪口や噂話に花を咲かせる俗物的な宮廷人たち。

そして、年を重ねるごとにますます執拗になっていく、姑からのいじめ・・・。(ゾフィーにとっては「嫁教育」でも、エリザベートにしてみれば、いじめ以外の何物でもないですよね)

こうした精神的な苦痛に、とうとうエリザベートの繊細な心は耐えられなくなり、うつや適応障害のような状態に陥ってしまいます

結婚して6年目、心を病みはじめた頃のエリザベート。
頬はこけ、目も落ちくぼんで、とても暗い、うつろな眼差しを浮かべています・・・。
婚約時代とはあまりにも表情が変わってしまっていて、結婚生活の苦悩の深さがうかがえます。

 やがて、宮廷生活になじむことができなくなったエリザベートは、次第に公式行事や晩餐会をボイコットするようになります。そして、現実から逃れようとするかのように、過激なダイエットにのめりこむようになっていきました。

 暇さえあれば、鉄棒や吊り輪を使ったアスリート並みのエクササイズをしたり、毎日何時間も速歩をしたり、肉や魚を一切口にせず、フルーツジュースと牛乳、肉汁、卵だけの無茶な食事療法をしたり・・・侍医から繰り返し、命の危険を訴えられていたほどの、ストイックすぎるダイエット生活だったといいます。

エリザベートの居室に備えつけられた鉄棒とはしご運動器具。
他に吊り輪もあり、毎日何時間もエクササイズしたとか・・・。

 そんなエリザベートなのに、なぜか、スイーツには目がなく、チョコレートやケーキ、アイスクリームなどを毎日のように食べていました。時には、秘密の抜け道を通ってこっそり王宮を抜け出し、ウィーンの有名スイーツ店を訪れていたとか

実は、ウィーンやブタペストにあるスイーツ店には、エリザベートの足跡やエピソードがたくさん、残されているんですよ。

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現役外科医、元報道記者の「プリンセスの歴史マニア」。 歴史上のプリンセスの人生を通して「女性がハッピーに生きる知恵」を発信中。

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