ロココの華ポンパドール夫人~心を掴む天才プロデュース術~

3:王の寵愛とファンを掴んだ「劇団ポンパドール」

同時代のオペラ座花形バレリーナ、マリー・カマルゴの舞台の様子を描いています。
ついに、国王の公式寵姫という、王族に次ぐ高い地位を手に入れたポンパドール夫人。
ところが、「寵姫」という立場は、宮廷内でも敵やライバルが多く、いつ追い落とされるか分からない不安定なものでした。
それに加えて、高位の貴族や王族たちから見れば、ポンパドール夫人は「どこの馬の骨とも分からない平民の女」・・・。国内で最高位に近い貴族たちにとっては、自分よりもはるかに、はるかに低い身分の者にかしづかなければならないなんて、ものすごい屈辱を感じるでしょうね・・・。
実際に、ヴェルサイユに入った当初、ポンパドール夫人の周りは360度どこを見渡しても、敵、敵、敵ばかり・・・。貴族たちからの嫌がらせや追い落とし工作も盛んに行われていたといいます。
守ってくれる味方がいないどころか、自分のことを好意的に見てくれる人すらほとんどいない孤立無援の状態。彼女は国王の寵愛を失えば、たちまち、ヴェルサイユを追い出されてしまう不安定な立場に置かれていたのです。
そして、そうならないためには、仲間や応援してくれるファンを増やしつつ、飽き性で移り気な国王を、自分につなぎ止める術を見つける必要がありました。
そこで、彼女は、誰も思いつかなかったような奇策に出ます。国王の身の回りの貴族たちを集めて、「素人芝居」をはじめたのです!
当時のヴェルサイユ宮殿では、プロが演じる派手なオペラやバレエ、演劇は頻繁に行われていました。
けれども、宮廷人たちが自ら役を演じ、演出や音楽の演奏もして、小劇場で演じる・・・今で言う「文化祭」のような催しはまさに、前代未聞のことでした。
しかも、ポンパドール夫人は、お遊びのような「お芝居ごっこ」で終わらせるつもりはありませんでした。素人芝居とはいっても、観客を心の底から喜ばせるようなハイレベルな出し物を作るために、徹底的にこだわりぬいたのです。
プロの一流ダンサーや俳優、劇作家を招いてレッスンをしたり、発声や体力作りから徹底的に行って、練習も本格的なものだったそうですよ。

画面左端で主役の貴婦人を演じているのがポンパドール夫人。
舞台で役を演じていたのは、政治の中心で活躍する大貴族、王の取り巻きの廷臣、美人と評判の貴婦人など、ヴェルサイユの住人たち。宮廷人にとっては、とても馴染みがある顔ぶればかりです。
見知った仲間が舞台に登場して、プロ顔負けのハイレベルな芝居やダンス、歌を披露すれば、観客の宮廷人たちは、ものすごくビックリしたでしょうし、さぞ楽しかったことでしょうね。
舞台の完成度の高さと面白さに観客は感動し、友人や知人の素晴らしい頑張りに驚き、ますます応援したくなる・・・一度、芝居を見た人は、たちまち劇団のファンになってしまった、というのも頷けます。 実際、毎回、観客は大喜びして、拍手喝采の嵐だったそうですよ♪
その中心で、いつもポンパドール夫人は主役を演じ、子供の頃から磨き上げた演技力や歌・ダンスで観客を魅了したといいます。芝居もオペラもバレエも・・・何をやっても一座の中で圧倒的な実力を誇っていたそう。
これには、国王も大喜びで、毎回、次の舞台を心持ちにしていたとか。さらに、舞台上でキラキラ輝くポンパドール夫人の魅力にますますハマってしまい、こんな素敵な楽しさを作り出してくれる寵姫にぞっこん惚れ込んでしまった・・・といいます♪

劇団を結成した26歳の頃。本物の女神のような輝くばかりの美しさですね♪
さらに、小劇場は席数が少なく、わずか数十人しか観客が入らず、国王をはじめ、ごくごく一部の選ばれた人だけが舞台を楽しむことができました。
やがて、評判が評判を呼び、すさまじいチケット争奪戦が繰り広げられたといいます。ポンパドール夫人や劇団関係者に「チケットを融通して欲しい」との直訴や懇願が相次いだばかりか、裏では賄賂や高額転売が横行したというから、今で言う人気アイドルのチケット争奪戦みたいな大フィーバーを巻き起こしていたんですね・・・(^^;)
そして、ポンパドール夫人は一躍、人気者となり、大成功を分かち合った一座のメンバーとは固い絆で結ばれていくようになります。
結局、劇団は予算の関係で5年間で幕を閉じることになりますが、ポンパドール夫人は、劇団を通して、沢山のファンや仲間、国王の揺るぎない寵愛を手に入れたのです。
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